面白い話13

小泉八雲の「常識」より


小さな田舎寺の和尚のもとに夜な夜な普賢菩薩が姿を現すという。
猟師がそれを聞いて和尚のもとを訪ねるが、毎晩和尚と一緒に菩薩を迎えているという小僧の言葉に疑問を抱く。
その夜、和尚たちとともに光り輝く普賢菩薩の姿を見た猟師は突然立ち上がり菩薩に矢を射掛けた。
その瞬間、悲鳴とともに光も菩薩の姿も消えた。
和尚は半狂乱になって猟師を罵るが、猟師は「徳の高い和尚が仏を見ることが出来るのはわかるが、小僧や殺生を生業とする猟師の自分にまで姿が見えるとはおかしい。仏を騙り、和尚の命を狙った化け物の仕業ではないか」と言って理路整然と和尚を諫めた。
翌日果たして、寺から血のあとを辿ってみたところ大きな古狸が猟師の矢を受けて倒れていた。


八雲はいう。「博学にして信心深い人であつたが僧は狸に容易にだまされてゐた。しかし猟師は無学無信心ではあつたが、強い常識を生まれながらもつてゐた。この生まれながらもつてゐた常識だけで直ちに危険な迷を看破し、かつそれを退治することができた」

ネタ元:
金川欣二 言語学のお散歩
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