『搾取される若者たち―バイク便ライダーは見た! 』

まず素晴らしい書評を2つ
http://d.hatena.ne.jp/idiot817/20061021/p1
http://sociology.jugem.jp/?eid=171


心理的報酬という言葉がある。仕事の報酬の中でも、お金として支払われる経済的報酬に対して、自己実現や、やりがいといった、気持ちを満足させる報酬という意味で使われていると思う。


この心理的報酬をどう見るかが今回の話。この本の中で、どんどんとストイックに仕事に没頭していくバイク便ライダーたちは、経済的・社会的に危険な立場に自らの意思で陥ってしまうというもの。


自分もライダー達と同じような歳なのもあるのか、自己実現ハイ状態とでもいうべき心理はよく理解できる。
ストイックである事に価値を置きすぎるあまり、身体的な自分を見失い、袋小路に追い詰められていく様は、以前書いた、正論原理主義の話と良く似ている。↓
先鋭化する主義と『ファイトクラブ』:http://d.hatena.ne.jp/kojitya/20090317/1237282340


人類学者のレヴィ・ストロース(肩書きはこれでいいのだろうか?)が、欧米人と日本人の労働観の違いに感銘を受けたという記事がある↓
労働を苦役と思わぬDNA:http://blogs.yahoo.co.jp/theodor_w2006/43489720.html
感銘とはいっても手放しで賞賛しているわけではないだろうけど(メンタルヘルスに悪影響があるのではとか言ってた気がする。)このへんの労働観は誰しも自分の中でしっかりと確認しておく必要があるだろう。


もともと文化的にこういう気質があったのだろうか?
もしかして人口密度の高さから、心理的に自分の利得より地域貢献を迫られていたのかも。なんちて。↓
「タメグチ」的ガバナンスの歴史:http://www.tez.com/blog/archives/001301.html


とにかく見識の狭い努力によって自己陶酔するプロセスには気をつけましょう。「たまには立ち止まって考えましょう」というセリフはこういう時のためにあるのだろう。


著者が本の中で引用していた「ザ・スミス」の歌詞がいいので、メモ。
  僕は職を探して、ついに職を見つけた。
  でも、神様は僕がみじめだってことを知ってる。
  人生のなかで、僕が生きてても死んでてもどうでもいいような人たちに、
  どうして貴重な時間を使わなくてはならないのだろう。


搾取される若者たち ―バイク便ライダーは見た! (集英社新書)

搾取される若者たち ―バイク便ライダーは見た! (集英社新書)