スパイラルの境目‐『下流食い』

素晴らしい書評を3つ
http://rei-no-oyaji.cocolog-nifty.com/blog/2007/02/post_570e.html
http://d.hatena.ne.jp/rintaromasuda/20061114/1163456252
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50636471.html

小さな事からズルズルと下向きのスパイラルに落ち込んでいく様が非常に印象的だった。
自分の身近にも勘定が苦手な人がいて、非常に危なっかしくて恐ろしい。その先がこんな世界だと想像して、つい説教してしまう。
でも上記リンクの3番目のdankogai氏のいう、

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借金に対する罪悪感がむしろ多重債務者予備軍をサラ金に追いやっている懸念がある。「借金は悪」と子どもの頃から耳たこになるぐらい聞かされれば、相談だってしにくくなる。身内に無心を頼めば説教される。銀行に融資を頼めば山のような書類を書かされる。それなら何も言わずに黙ってかしてくれる方がいいではないか。
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結局、一番借り易いところから借りていたのではないか。
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を考えると説教の仕方もよくよく考えないといけない。本人がちゃんと勘定ができるようになるように仕向けなければと思う。

引用した部分は、「思慮の浅い考えで借りた自己責任ジャマイカ。」でバッサリ切られてしまいそうだ。まぁ確かにそうなのだが、危なっかしい人がいて、その人を守りたいと思うなら、かなり重要な点だ。
なぜなら、人はなかなか合理的に動くものではないからだ。
以下参照↓
やっぱり貧乏人は合理的でないのかもしれないよ。:
http://cruel.org/economist/economistpoor.html

合理的に動かないのは貧乏人だけではないと思うが、(もちろん、上記の記事は「合理的に動かないから貧乏になる」とか「金持ちはみんな合理的だ」とか言っているわけではない。)よかれと思って助言や助力をしてみても、思ったとおりに行動してくれる訳ではないという事をかなり明確に認識する必要がある。
途上国で、赤ちゃんの死亡率が高いので、粉ミルクを慈善事業として配ったら、親ばかりが飲んだとか、使い方がわからなくて子供を死なせてしまったとかそういう話もあったけど、相手の反応まで意識して助言・助力してる人はなかなかいないものだ。悪い話、意識してにしろ、無意識でにしろ、自分のアリバイ的に助言・助力する人もいる。

この本で下向きのスパイラルの先の世界を知る事は重要だろう。漫画の『闇金ウシジマくん』も素晴らしい。マンガだけに、臨場感というか、恐怖感ならこちらは本書のさらに上を行くだろう。

さらに突っ込んでこの辺の話題を掘り下げたいなら、以下の紙屋高雪氏の記事を参考に、幅を広げるといいかもしれない。マルキストを公言するだけあって、この手の問題には造詣が深い。

真鍋昌平闇金ウシジマくん』――呉智英の「平板さ」にもふれて:
http://www1.odn.ne.jp/kamiya-ta/yamikin-ushijimakun.html

成功した(成功の定義については今回はとりあえず放置。)人の本を読むと、良きにせよ悪しき(ただのタカリ合いだったり?)にせよ、上向きのスパイラルに乗る瞬間というのがあるようだと感じられる。また、本書のような社会問題の本を読むと下向きのスパイラルの存在も感じられる。
このスパイラルの踊り場というか、境目はいったいどこなのだろうか。

下流喰い―消費者金融の実態 (ちくま新書)

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闇金ウシジマくん 1 (ビッグコミックス)

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