現在と原罪-『環境学の技法』

こんな記事がありました。↓


これは偽善だ!(映画『オーシャンズ』を観て):
http://d.hatena.ne.jp/tsumiyama/20100214/p1


この記事中に

そう、この映画に込められた環境保護のメッセージはいちいち傲慢なんですよ。

例えば「自然界の生態系は完全に調和が取れてるのに、人間だけが動物を絶滅させたりしてそれを壊そうとしてる」みたいな大ウソを平気で主張するわけです。

そりゃ人間の文明や活動は生態系に大きな影響を与えます。でも野生動物のふるまいだって、常に生態系を変化させてるんですよ? 完全に調和して淘汰圧のなくなった生態系は「死んだ」生態系といってもいい。

"人間だって自然の一部だから生態系には干渉する、でも、人間には知性があるからどこまでが妥当かを考えられる。"

俺はこれが環境問題を考える上での1の1だと思います。人間も自然の一部だとしたうえで、人間中心に考えるべきなんですね。だって俺たち人間だもの、みつを。

なのにこの映画では、いきなり巻き網漁や捕鯨を「残酷だよね〜」とかいって悪者扱い。正直、何様だと思いますよ。

あと、細かいとこだけど、ナレーションで「人間は自然と和解できる」とかいったりね。

和解ってなんだよ!

この辺からも自分たちを神様とでも思ってるような傲慢さを感じるんですね。


という記述がある。

この映画は未見ですが、記述だけ読む分には同意です。
もうずいぶん前に読んだので記憶があいまいなのですが、『環境学の技法』の中でも、「環境」
とは身の回りの「現在」の状態のことであって、人類のニーズを超えた望ましい状態を指すわけではない。ということを書いていたと思う。

何か実際に問題があれば解決のための技法がある、もしくは必要とされるわけで、「環境を良くする」といった場合には「誰にとっての環境なのか」を考える必要があるわけです。そこを提示しないまま、映画「オーシャンズ」の製作者たちがさも自明のように「自分にとっての環境」を「地球にとっての環境」のように語るもんで、「何様だ」となるんだと思います。私も、「お前は地球様なのか」と思いました。


しかし、この考え方を責めにくい所もあって、それはこの考え方は「原罪」に則しているのではないかと思うからです。
ウィキペディアで調べてみると、原罪とは↓

そもそも原罪の概念は『創世記』のアダムとイヴの物語に由来している。『創世記』の1章から3章によれば、アダムとイブは日本語で主なる神と訳されるヤハウェエロヒム(エールの複数形)の近くで生きることが出来るという恵まれた状況に置かれ、自然との完璧な調和を保って生きていた。主なる神はアダムにエデンの園になる全ての木の実を食べることを許したが、中央にある善悪の知識の木だけは食べることを禁じた。しかし、蛇は言葉巧みにイヴに近づき、木の実を食べさせることに成功した。アダムもイヴに従って木の実を食べた。二人は突然裸でいることが恥ずかしくなり、イチジクの葉をあわせて身にまとった。主なる神はこれを知って驚き、怒った。こうして蛇は地を這うよう定められた呪われた存在となった。
結果的に、2人は主なる神との親しい交わりを失い、永遠の生命を失い、自然との完全の調和も失った。ヤハウェエロヒムはアダムとイヴが命の木を食べることを恐れ二人を呪い、エデンの園から追放した。いわゆる失楽園である。子孫たちにも2人の行動の結果が引き継がれることになった。
2人の行動は2人の運命を変え、その子孫たちにも累を及ぼす結果となった。2人の子孫たちは決して罪に塗れている訳ではないが、人間の歴史そのものが楽園追放前の親しい神との交わりの復活を目指す努力であるということができる。2人が楽園を追放されたのは、木の実を食べたからではなく、主なる神の言葉に従わなかったからである。主なる神の言葉から考えると、もし2人が木の実を食べなければ永遠に生きることが出来たはずである。
ユダヤ教の一部では、創世記の蛇をサタンの別の姿であるとする見方も生まれてきた。イエスバプテスマのヨハネは、こうした蛇に対する見方を持っていたらしい[要出典]。

ということらしいです。これなら先祖の罪を贖罪しようと頑張ってる人なわけで、偽善というよりは認識の違いなわけで、神様が出てくる話なわけで、「お前は神様か!」と突っ込んでも「おいらは神様じゃないけど神様が望んでるんだ」って返事になっちゃうわけです。


科学的な「現在」と思想的な「原罪」のスレ違いが「環境」の考え方をややこしくしているのでしょうね。その認識から始めなきゃいけないのかもしれません。


最後に恒例なので『環境学の技法』の素晴らしい書評を↓
http://www.asahi-net.or.jp/~zi9n-ymgs/books/2002/aug19.html
http://www.yasuienv.net/EnvSciDefinition.htm

環境学の技法

環境学の技法