ゴールが近い−『ヒメアノール』
素晴らしい書評は以下↓
古谷実は毎度同じテーマで書き続けているように感じる。どんなテーマかというと、「生きているって何か」とか「人生の意味」とか、漠然として曖昧な、厨二病をこじらせたようなテーマだ。
『僕といっしょ』『グリーンヒル』『ヒミズ』『シガテラ』『わにとかげぎす』と過去の作品すべてに共通している。
そして今回の『ヒメアノール』に繋がってるのだが、今回驚いた。
前回までの作品には雲がかかったような、「ハッキリとしなさ」に覆われていた。物語としてはシャープな展開があっても、読後に何が残っているかと問われると「?」なものが多かった。当時やたら面白く、興奮して読んだ『ヒミズ』についても、読後感については一緒だ。でもまぁ当然なのかもしれない。テーマが、曖昧さそのものを本体としているようなテーマなんですから。
しかし、今回の『ヒメアノール』は少しだけ違う。形を見せ始めた著者の意志を感じる。たぶんこのテーマはどこまでいっても、個人的正解の域を出ないつぶやきの類なんだろうと思う。しかしそれをそのまま飲み込んでさらに外に向かって発露する強い意志を感じるのだ。
物語としては相変わらずの暗い展開なのだが、他の作品と比べてなぜか爽やかな疾走感があるのは、著者なりの答えを発露させ始めているのかもしれない。
たぶん次回作だ。次回作で何かしらハッキリとした物が出てくるに違いない。
- 作者: 古谷実
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/11/06
- メディア: コミック
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