危機感というドラッグ。そしてその毒性について。その3

危機感というドラッグ。そしてその毒性について。その1
http://d.hatena.ne.jp/kojitya/20101009/1286576380

危機感というドラッグ。そしてその毒性について。その2
http://d.hatena.ne.jp/kojitya/20101012/1286832735


じゃあなぜ出版業界のエラいひとたちは危機感満載なのか。なぜ電子書籍が黒船に見えるのか。


それはもちろん、「編集」と「プロモーション」をしていないと考えているからだ。ただ紙に印刷して売って儲けていると考えている。取次ぎに配本し、書店に流通させることができることだけが強みだと考えている。それでは電子書籍が黒船に見えても仕方がない。


確かに、コンテンツだけでなく編集のセンスまで併せ持っている人は稀にいる。そういう人は自作の電子書籍で素晴らしい物を創り上げるだろう。マーケティングのセンスまであれば、一人で経済的にも素晴らしい成果を挙げるだろう。出版社が要らなくなるケースは存在する。


でもそんなのは紙でも一緒だろう。コミケで大儲けしている人がいることからもわかる。


ただ、そんな器用な人ばかりじゃないし、自分の持つコンテンツが誰でも表現できる世の中になったからこそ、受け手側のピックアップする作業は膨大になり、それによるタイムコストがかさむようになる。それなら編集はより価値を持つようになるだろう。そして今までも編集がやってきたことだが、タイムコストだけでなく、コンテンツに関わる周辺情報について時間軸や空間軸を含めて過不足なく紹介できればコンテンツの価値は単発のものと比べてより高い物になる。


だから正直、この件について危機感は思考停止を肯定できるドラッグにしか見えない。その毒性は会社を潰しもするかもしれない。


ウェブの世界は宝の山だし、プロモーションとしても安価で中身のある方法が沢山考えられる。出版の未来だなんて大それた事を言ったが、この業界は変わらなくてもいい。ただ思い出せばいい。本来の意義を思い出せば、具体的な仕事はちゃんと後からついてくる。


そう思う。