人が集まれば、それだけで問題だ。−『平成大家族』

素晴らしい書評は以下↓
平成大家族:
http://ameblo.jp/indi-book/entry-10175939745.html

「平成大家族」 まるでカメレオン・アーミー!:
http://blogs.yahoo.co.jp/good96luck/19888573.html

『平成大家族』中島京子(こちらは担当編集者さん)
http://renzaburo.jp/shinkan_list/temaemiso/080205_book01.html


内容については上記書評をどうぞ。ブワッと風景が浮かんでくる素晴らしい表現力で描かれる現代家族譚。文字を追っている感じがしないくらいスッと文章がイメージに変換されていく様が気持ち良い作品でした。


小説はその時代を切り取り、読者に自身の第三者的視点を与えると言ったのは誰だったか。本書は「ひきこもり」「シングルマザー」「いじめ」「不安定な経済情勢」「嫡出推定」などをそれぞれの登場人物に当てはめて、一章ごとに主人公を替えて語られます。その登場人物達がひとつの家族として破綻なく語られる様は、まさにそんな「正しい小説」なのかもしれません。物書きには小説家というプロがいるということをまざまざと見せつけられました。


そんな問題だらけの家族で、本人たちはそれぞれ苦しみながら自分の道を見つけていくのですが、なぜか全体はほの明るく語られているため、「どんな時代だってみんなそれぞれが、それぞれの時代の苦しみを持って生きてきた。一見ツラいけど、悲観しなくても、振り返ればそれも幸せかもしれないよ。」と語っているような、そんな感じがしました。タイトルに「平成」と付いているのは、今も昔も変わらない事が意識されているからこそ、現代がテーマであることを示すための「平成」なんだろうと思います。


数年前のデータですが、「平成19年労働者健康状況調査結果の概況」によると、「仕事でのストレス」の原因は、「職場の人間関係の問題」が一番多いそうです。結局人が集まる事そのものが問題。でもそんな人間関係の問題を少しずつ解きほぐしていく先に地に足の着いたジックリとした幸せがあるのかもしれません。


平成19年労働者健康状況調査結果の概況:
http://www-bm.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/saigai/anzen/kenkou07/index.html


人が集まれば、それだけで問題だ。でもそれは普遍的な問題であるからこそ、取り組む価値のある問題なんでしょうね。

平成大家族 (集英社文庫)

平成大家族 (集英社文庫)