ネットは民主主義2.0をもたらすのか−『フェイスブック 若き天才の野望』

素晴らしい書評は以下↓
http://d.hatena.ne.jp/michikaifu/20110123/1295819920


サクセスストーリーとしての部分だけでなく、ビジネスの仕組みといった部分も詳しく描写されていて、2つのラインが綺麗に絡まり合って話が進んでいくところは見事。お勉強的な本だとわかりにくい(仕組みだけわかったところで「強い動機がどこにどんなカタチでどのくらい働くのか」といったグラデーションのある部分は意外とわからないものです。)ベンチャー投資の「雰囲気」が伝わってきます。


ところで、本書でfacebookのビジネスを俯瞰してみると、政治機能がビジネスになり始めた感がある。


ホテルレストランの従業員が有名人のプライベートについて発言した事件では、警察ではなく一般ネットユーザーが先に個人特定をしていたように記憶している。こういった一般ユーザーによる個人特定>晒しなどの社会的私刑(死刑の書き間違いじゃないよ)のような事件は、立教学生内定取り消しの件など、数年前からかなりある。良いか悪いかは置いておいて、facebook実名主義SNSが主流になればこの傾向は強くなるように思われる。


実際、facebookの生みの親・トップであり、本書主人公のマーク・ザッカーバーグは文中で、

自分が誰であるかを隠すことなく、どの友だちに対しても一貫性をもって行動すれば、健全な社会作りに貢献できる。もっとオープンで透明な世界では、人々が社会的規範を尊重し、責任ある行動をするようになる

と言っている。そして、

透明性が高いほど寛容な社会が生まれ、誰もが時には悪いことや見苦しいことをする、ということをやがて受け入れるようになる

とも。


上記の考え方に触れてから相互監視→社会的私刑に至った事件を考えると大げさに言えば警察機能、司法機能の一部を代替しているような気がする。「みんなが決める時代」は「みんなが裁く時代」になるのだなぁと。。。


先の地震もそうだが、何か災害などがあったときにツイッターSNSで安否連絡をしたり情報提供しあったり、そういった助け合いのネットワークはゆくゆくはセーフティネットの代わりになりそうだし、将来的には「住基ネット」のような本人認証なども代替しそうな感がある。さらに今後Facebookでは仮想通貨「フェイスブック・クレジット」がスタートするとのこと。


この現象はいったいなんなんだろう。都市化が進んでいる地域では地域の絆がないor薄いためにセーフティネットが働きにくいという話を聞いたことがある。『反貧困』の著者が言う所の「溜め」ですね。

経済の外側が見えているか‐『反貧困』
http://d.hatena.ne.jp/kojitya/20090916/1253058919


昔の地域の絆の代替としてのニーズがSNSをここまで大きな物にしたとするならば、将来、新しい民主主義のあり方を現象として創りだすかもしれない。


な〜んて、そんなドでかいイメージをさせるぐらいの勢いのある本で、非常に興奮させられました。


ちなみにデヴィッド・フィンチャー監督ということで楽しみにしていた映画『ソーシャル・ネットワーク』も観に行った。(本書はこの映画の原作ではないのでご注意。)こちらは完全にエンターテインメントとしてのサクセスストーリーで、奥行きのある印象を受けるのはやはり本書だ。と感じました。でもさすが!『ファイトクラブ』の時も思いましたが、この監督はキャラづくりが半端じゃなく上手く、エンタメとしては映画もめっちゃ面白いです。


本書も映画も!という方は、映画を先に観た方がいいかも。イメージができて、少々ややこしいビジネスの仕組み描写部分に集中力を多く割けるようになると思います。また、本書がfacebook側ののインタビュー中心なのに対し映画はfacebook側の協力は得ずに作られているため、客観的に「フェイスブック」を感じ取るためには両方摂取するのがオススメ。


ちなみにフェイスブックのアカウントも取得しました。今アカウントを持っている、もしくはこれから作りたいリアル友人の方、是非つながりましょう!(リンクは示さないので探して下さい!けっこう簡単に見つかります。><;ノ)

映画『ソーシャル・ネットワーク』公式サイト↓
http://www.socialnetwork-movie.jp/

本書のフェイスブックファンページ↓
http://www.facebook.com/fbYabou


フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)

フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)