悪貨が良貨を駆逐するinウェブ?−『ウェブはバカと暇人のもの』
素晴らしい書評は以下↓
ウェブはバカと暇人のもの (中川淳一郎)
http://blog.tokuriki.com/2009/06/post_451.html
梅田望夫と中川淳一郎の共通点 - 書評 - ウェブはバカと暇人のもの
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51230000.html
ウェブはバカと暇人のもの
http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20090610
コミュニケーション版の「悪貨が良貨を駆逐する」みたいな話。
以前たくさんのリツイートされた「金田一少年の事件簿」や「神の雫」の原作で有名な樹林氏のツイートを引用するとこうだ。↓
他人の創ったものに素直に感動し、自分も何か創りたいと思う人はクリエイター向き。感動しつつここがこうだったらもっと良いのにと、つい考えてしまう人は編集者やプロデューサー向き。何でもすぐあら探しする人は、モノ創りには向いておらず、例えば漫画ならそう遠くない将来、読者ですらなくなる。
本書著者が問題にしているのはこの3点目の人物だろう。大まかにいうとこのような人物たちが悪貨となってウェブ上を席巻しているといった内容が本書の要旨だ。
本書ではそのような考えに至った著者の経験が、具体的にじっくりと説明されていて非常に説得力がある。特に公私の線引きが難しい部分なんかは私もとても共感した。例えば、電話は基本一対一が前提だし、それに対してテレビはマスを前提として作られている。
しかしネットはどちらも想定されていて、さらにグラデーションがあって非常にわかりづらい。どこから公の場として考えるべきなのか。「嫌なら見なきゃいい。」が通用するしないの線引きはどこなのか。営利非営利の違いぐらいではなさそうなのは容易にわかる。本書で著者がその結論に至るまでの経緯が記されているが、その「いつの間にか公共化してました」的な混乱はよくわかるような気がする。
ウェブのビジネス利用(特にマーケティングやプロモーション)については悲観的な書き方がされていた。その中でテレビ最強説について語られていたが、たぶんネットはテレビに負けているというより、結果が現れる世界なんだと思う。テレビはプロが作ってマスに流す前提だから、情報の流れの上流にあるだけなんだと思う。情報の受け手が渦巻いている海の部分の一部がネットであるためにそう見えるのではないか。私は現時点ではウェブはマーケティングやプロモーションで成果を出すというよりは効果測定の場として利用するのが良いように感じる。ウェブでどう受け止められたかを良く観察して、より良いプランやアイデアをつくるネタにしたり、普段の効果測定から見えないバイアスの違う意見を掬いとることで商品開発にフィードバックしたり・・・といったことには良いものになりそうな気がする。そして将来は海の水が雨雲となって上流であるテレビにも降り注ぐことになるだろうし。・・・いや、偉そうなこと言って自分でもよくわからないんだけれども。。。
普段あまりウェブに触れない人には実感・共感の伴わない納得をしそうであまりオススメできない本書だが、ウェブでいろいろと失敗し続けている私のような人にはオススメしたい一冊。
- 作者: 中川淳一郎
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2009/04/17
- メディア: 新書
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