腐らない物語−『真説・ザ・ワールド・イズ・マイン』

素晴らしい書評をひとつ。↓
http://www.kogumarecord.org/mt/coyote/2006/12/30_1630.html


物語には必ず著者の意思や価値観や哲学が含まれている。
徹頭徹尾完全な形で表現されていれば美しいが、その表現に強さはなくなってしまう。
「はい、これが答えです。」とやってしまえば簡単に論破されてしまう。
「答えはないが考え続けるべき。」もそれ自体が答えとなって脆くなる。
そういう意味で、とっ散らかったメッセージをぶつけまくって回収しきれない感のあるこの物語の混沌ぶりが、逆にこの物語に強さを与え、成功させているように感じた。


・・・ってなんでこんな上から目線なんだろう、僕。
とにかく脇の脇役までキャラ立ちが素晴らしく、すべての登場人物に人格を感じさせるという強烈な漫画でした。
すべての人物に自分を投影して、自己嫌悪しました。
このマンガは1997年〜2001年にかけて連載されていたようですが、2010年の今日読んでも全く古い感じがしません。この「腐らなさ」はきっと物語よりもキャラクターを描いているからだと思います。人は常に一個人であるために、人を描ければ時代を感じさせないのでしょう。
人がたくさんの人との交流によって成長するのであれば、このマンガはたくさんの人と出会える豊かなマンガです。主人公一人とだけしか交流できない物語が多い中、素晴らしいマンガであると思います。

真説 ザ・ワールド・イズ・マイン (1)巻 (ビームコミックス)

真説 ザ・ワールド・イズ・マイン (1)巻 (ビームコミックス)